“ねじること”これこそが横向きに滑るすべての遊びを果てしなくカッコよくしている最大の要因だ。エアーはもちろん、カービング、リッピング、グランドトリック、すべての場面で身体のねじれがスタイルに直結している。そして、このねじり芸の最高峰にあるのがトゥイークだ。日本語で「ねじる」という意味を持つ、全身の関節をあり得ないほど複雑にねじりまくりながら飛ぶ例のアレのことだ。

昨年3月、飛騨河合スキー場にて「第一回トゥイーク世界選手権」が開催された。主催は毎年志向を変えたリアルで楽しいイベントを企画している高山の変態ショップ「パイルドライバー」。ミドルサイズながらなかなかの滞空を味わえる10Mのステップダウンとオマケにエンドボール風バンク。ラインもルーティーンも関係なく、誰のトゥイークが一番イケてるのかだけを競うというアホなコンテストだ。判断基準は完全にジャッジの主観、つまり好みだけ。とは言っても、この日のジャッジは90年台初期からのトゥイークのスタイル変遷について年号&雑誌、ビデオのタイトル入りで4時間しゃべり続けることができるような無名の好き者3人組。当然誰もが納得のリザルトをたたきだしていた。エントリーはプロアマ混合でなんと80名。公開練習×2本、予選×2本。この場に居合わせた全員が午前中だけで320回のトゥイークを見た計算になるわけだが、不思議なことにまったく飽きることはなく、それどころか時間とともに皆のテンションは上がり続けていた。少なくとも80種類のトゥイーク。なかにはその都度スタイルを変えて飛ぶライダーもいる。大袈裟なようだが、各自のスノーボード観が凝縮されスタイルとしてにじみ出る、トゥイークとはそんなトリックなんだということにこの場にいた誰もが気づかされたのではないか。トゥイークとインディーだけで残り数十年のスノーボード人生を乗り切ろうとしているオレにとって、これほど興奮したコンテストは初めてだった。

 現在メディアで目にすることができるのは回転数や飛距離を競うスタント的ライディングや、山奥でスプレイをぶちまけ崖から飛び降りるフル装備スタイルばかりだ。当然最先端を見せるのがメディアの役割なのはわかっているし、否定はしない。否定はしないんだけどね、スノーボーディングがどんどん現実離れしていっていると感じている人、かなり多いと思うんだよね。大半のスノーボーダーは休日にゲレンデを滑ってるし、だいたいあんなデカいキッカー飛べないと思うよ、普通。

ともかく、中級者でも「ドキドキするけどなんとか飛べる」サイズのキッカーに挑戦できて、「ギャラリーに注目される」緊張感を味わえ、「あの人のスタイル、カッコいい!」と身近な目標を見つけられる上に、プロが本気で楽しめてしまうこのコンテストはオレに、スノーボーディングとは「誰もが気軽に」楽しめる、そして「一生かかっても解読しきれない」奥深さを持った最高のあそびなんだ、ということを再確認させてくれたのだった。

田口勝朗
1966年東京生まれ
スノーボードウエアGreen Clothingのボス。ライダーと対等にきわどいセクションを攻め続けることにプライドを持っているようだが、ライダーたちが手加減していることを本人は知らない。この大会に最年長でエントリーの41歳。
八百由 www.800freedom.biz


(雑誌Snow Style掲載/2007年)