Backside slash
ねじれることで簡単にカタチが決まる。誰もが楽しめる入門編リッピング。
“ねじること”これこそが横向きに滑るすべての遊びを果てしなくカッコよくしている最大の要因だ。リッピングはもちろん、エアー、カービング、グランドトリック・・・。すべての場面で身体のねじれがスタイルに直結している。
バックサイドスラッシュはとてもスタイルを出しやすいアクションだ。フロントサイドよりも身体をねじりやすいからね。ねじれてしまう、と言った方が正しいかも知れない。たとえばアクションのピークで身体をまったくねじらないとすると、進行方向に背を向けてボードをスライドさせている状態になるけど、実際には目線は必ず進行方向に向かうので、結果的に自然と身体がねじれる。真後ろに置いた鏡に映る自分を、上体を思い切りねじって見る動作をしてみればすぐに理解できるはずだ。フロントサイドの場合は鏡に向かって立っているようなものだからねじれが生まれにくい。だからスタイルを表現するのが難しいんだよ。鏡を使って理想のカタチを研究してみるのが、カッコいいアクションへの近道かも知れない。
前回、「レイバックは3D地形を使ったターンで、リップでパワースライドをしている訳ではない。」というお話をしたけど、これはすべてのリッピングに共通することなんだ。でも、バックサイドに関してはリップでパワースライドをするつもりで突っ込むだけで、ボードはなんとなく弧を描いてくれる。深く考えたことはないから理由はわからないけど、なにしろうまくできてしまうんだ。だからバックサイドスラッシュほど簡単なアクションはないのかもしれない。
そうは言っても、この写真の山田誠みたいなバックサイドスラッシュはそうそうできるものじゃない。ぶちまけられたスプレーからもわかる通り、スピード(それもかなりの)に乗って弧を描こうとするボードを、後ろ足を蹴り出すことによってスムースにドリフトさせている。今、彼の全体重は後ろ足だけに乗っていて、前足はノーズの向きをコントロールするためにそっと添えているだけ。エッジがゴリゴリと音を立てて雪面をえぐる、このアクションで一番気持ちいい瞬間だ。そして蹴り出しの強さに比例して身体はあり得ない程にねじれていくと言うわけだ。
田口勝朗
ウエアブランド“グリーンクロージング”のボス。経営者でありながらライダーと対等にきわどい斜面を攻めることにプライドを持っているようだが、ライダーたちが手加減していることを本人は知らない。今回登場したゴリゴリスケーターでもあるニセコ在住の山田誠とは旧知の間柄である。
Rider Makoto Yamada Photo Yoshiro Higai
(雑誌Snow Style掲載/2008年)