18-1.jpg

Carving Turn
板は踏まなきゃ走らない。カービングターンは目的ではなく結果なのだ。

 誰もいないオープンバーンで遠心力と戦いながら限界スピードで飛ばしているとき。いきなり発見したヒットに向かうため、減速せずに急激な方向転換をするとき。朝イチのグルーミングバーンを気持ちよくクルージングしているとき・・・・・・・・・・・・・・。
スノーボードに乗っているほとんどの間、オレはまったく意識せずにカービングターンを繰り返している。カービングとは雪面にがっちりとエッジをかませ、板を踏みこむことで加速してゆくズレのないターンのことだ。すべての局面でライディングの質を高めてくれるカービングターンはスノーボーディングの最も重要なテクニックのひとつだとオレは思っている。

 今の板はとても乗りやすく作られているのでズレないターンは誰にでも簡単に身に付けることができる。しかし、その代償として“板を踏む”という重要な動作はないがしろにされてしまいがちだ。棒立ちの状態で体重移動だけの振子のようなターンを繰り返す場合と、ターン前半で思い切り沈めた身体をピークでグイっと伸び上がらせる動作を加えたターンで同じラインをトレースした場合、当然後者の方がスピードに乗った上、安定した滑りになる。伸び上がる際に踏みこまれた板を、雪面が押し返すことで加速し、同時にエッジが雪面に食い込むからだ。たとえばクサビ型をした氷をステンレスの流し台に置いて真上から手のひらで圧力をかけると、その氷は手の中からニュルニュルと押し出される。さらにグイっと強く押すと氷は勢い良くどこかに滑って行ってしまう。きっちり踏めている時には、板と雪面の間でこれと同じ現象が起こっているのだ。オレは中級者と上級者の差はこの一点、つまり「踏めるか踏めないか」に尽きると思ってる。踏むということは板の性能を限界まで引き出すことに直結しているからだ。

この写真の中のオレは、ターンのピークをほんの少し過ぎた状態、視線は次のターンのピークに移っているが、エッジを弧の軌道上にガッチリ食い込ませながら板を走らせているというこのアクションで最も気持ちいい瞬間にいる。意識はすでに次のターンに向かっているのだが、身体は無意識のうちに板を踏み続けている。もっともっとスピードを出したいからだ。もしかしたら、カービングとは“ズレ”や“踏むこと”を意識してターンする行為ではなく、「もっと!」という攻めの気持ちが生み出すモノなのかもしれない。

Text&Ride田口勝朗 Photo 山田博行
ウエアブランド“グリーンクロージング”のボス。写真は、経営者でありながら攻めの姿勢を崩さない彼が2000年に訪れたジャクソンホールでのドライブ感あふれるカービングターン。スノーボードの真価はテールから十数センチのフレックス&トーションだ、と断言する彼のいい分はもしかすると正しいのかも知れない。

Rider Katsuro Taguchi Photo Hiroyuki Yamada


(雑誌Snow Style掲載/2009年)