“面”とか“角”とか
同じに見えて全然違う。違って見えて結構同じ。なんのこと?
スノーボーディングとは立体的地形を楽しむ遊びだ。それが自然にできたものだろうが、人工的に作られたものだろうが関係ない。ただただ目に入ったすべての立体に突っ込んで、なんらかのアクションをすることが目的なのだ。だからすべての地形と雪質に対応できる滑りを身につけることが、この遊びを楽しむことに直結していることは言うまでもない。
たとえばパウダーの朝イチ、コース脇に発見したバンクでバックサイドスラッシュを楽しむ場合と、春のボウルで同じトリックをメイクしようとした場合、カタチは似ていてもアクションの質はかなり異なるものになる。簡単に言うと前者は“面”に、後者は“角”に当て込んでいるからだ。正直なところオレはいままで“面”と“角”の違いを意識して滑ってはいなかったが、この2枚の写真を見て乗り方がずいぶん違うことを発見したのだ。スプレイから察するところ、パウダーをスラッシュする西山勇とボウルをグラインドするオレのスピードはそれほど変わらないはずだし、板の寝かせ具合からエッジングも同じ程度に思える。そしてアクションのピークでの二人のカタチはとても良く似ている。しかし、勇は完全に後ろ足加重で、前足は宙に浮いたノーズをコントロールするために軽く添えている程度なのに対し、オレは完全に前足だけに乗り(乗っているだけで板に加重している訳ではない。)後ろ足で架空の“面”を踏む感覚でテールを進行方向に押し出している。勇は大量のスプレイをぶちまけるために後ろ足を使い、オレは少しでも長くグラインドするために前足を使っているのだ。わかるかな。
オレはサーフィンもスケートボードも「やったことがある」程度なので間違っているかも知れないが、カービングのピークからスムースに蹴り出した後足でスプレイをぶちまける“面”への当て込みは水面とレールの関係、空中に飛び出すエネルギーを瞬時にグラインド方向に変換する“角”への当て込みはコーピングとトラック(乗ってる位置はだいぶ違うけど)の関係に思えてならない。
いずれにしても地形と雪質、そして気分に応じて様々な感覚を味わえるのは本当に楽しいことだ。
田口勝朗
アンチハウトゥ。自力で考えてメイクするためのきっかけを提案することが重要なんだよ。と語るグリーンクロージングのボス。彼がサポートするアウトフロウのボス西山勇との誌上セッションで、サーフ&スケートが生み出した普遍的アクションをスノーボードで表現するきっかけをつかんでみよう。
Rider Yuu Nishiyama / Katsuro Taguchi Photo Endo/marumo
(雑誌Snow Style掲載/2009年)